2020年は、なんと形容してよいのか、いまだ咀嚼しきれない、歴史に残る年となりました。
株式会社Flucleには5年前からのフルリモート経験があったため、自粛期間もありがたいほど勤務環境に変化はありませんでしたが、さまざまな面で「こんなつもりじゃなかった」という変化に直面したのは間違いありません。
中でもGWに恒例で行われる春合宿がなくなったのは、ちょっとしたマイナスでした。変化に翻弄されつつも、足元固めをすべき事業は山積み。顔を合わせる機会も減り、うっすら「このまま何年もコロナが収束しなければ、永遠に合宿などできないのだろうな」というネガティブな気持ちが生まれ…。
しかし、秋を迎え、だんだん2020年の終わりを意識するようになった頃、「秋は合宿をしようか」という話が出ます。もちろんコロナ第三波がきたときは中止、という条件の元、日程と参加メンバーを確定し、施設を押さえ、1年2か月振りの合宿の準備が着々と進み始めました。
2019年の合宿の様子は、以下記事からお読みください。
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行先は昨年と同じ、大阪府北部の有名な某滝の近くです。あと半月もすれば紅葉で視界が染まることを妄想させる、相変わらずの青紅葉の洪水を抜けて、7人での秋合宿が始まりました。
経営合宿って、なにするの?
と、よく聞かれますが、株式会社Flucleの合宿時間の大半は「サービスについて考える時間」に費やされます。
ベンチャーあるあるですが、これまで一瞬たりとも「サービスが完成した瞬間」はありません。常に未完のサービスの課題をモグラ叩きのようにフルパワーで潰しにかかる日々です。しかし処理に追われていてはいけません。モグラの居場所を先回りで想定し、「叩く」以外の解決策を模索し、これまでの概念を超えるサービス構築を同時並行で進める必要があります。
合宿のアジェンダより抜粋
現在私たちは、既存サービス「HRbase(2019年2月リリース、2020年3月リニューアル)」に加え、「HRbase for PRO」という社会保険労務士向けの新サービスの開発を進めています。(2020年11月現在、β版で提供中)
既存サービスは大きな課題を抱えており、全員がフルスロットルでかかっても超えられるか分からない高い壁を前に、自らもう1枚の壁をせっせと築いているような、首の締まる状態です。
だから合宿は重要。全員がスマホとPCを置き、ただひたすらに「サービスについて」向き合う時間は、日常では確保できません。ちなみにCS担当も、電話でのサポートをまる1日休止して参加します。それくらい、合宿での時間は重要なのです。
1日目、未来予測と、カスタマージャーニーの作成
というわけで、合宿で十分な成果を得るには、計画が大切です!
今回、リアルなスケジュールを公開させていただくことにしました。
ご覧の通り、分刻みです。
そして時間は、押しては巻いて、押しては巻いての繰り返しです。キツイです。
ただ、いつも感心し、そして自社ながら素晴らしいと思うのは、「ブレストでのアウトプット量が、めちゃくちゃ多い!」ということ。自分の意見やアイデアを書き出すのって、なかなかエネルギーが必要ですが、全員が驚く量のアウトプットを出してきます。5分もあればひとり15枚近くのふせんが消費され、テーブルがカラフルに埋まっていく様子は…
「ああ…無事に合宿に来れたんだなあ…」
不安を抱えながら通常業務とコロナ対応に追われ、光の速さで過去になった春夏を思い出しながら、緑あふれる窓の外を眺め、しみじみ…
する暇はないんですけどね。
とにかく、自分の意見や社会の未来やサービスのアイデアを、忖度も恥ずかしさもなく書き殴って全員でシェアし、研ぎ澄ませ、そこからまた次の課題を生み出せるこの環境は、今のところ全員にとって「安心安全」であるのだな、とそこに安心しました。
よく「社内からアイデアが出ない」という話を聞きますが、それは最終的に環境や条件を加味したジャッジをされるからではないでしょうか。
「面白いけど、リソースがない」
「斬新だが、顧客からそんなものを欲しいという声を聞いたことがない」
最後にそんなことをいわれるのが見えていれば、誰だってアイデアを出し惜しむのは当然です。
今年も配給された、白い錠剤(ブドウ糖)
「今は数字を追うべきではない」という判断と、だからこそのキツさ
驚かれるかも知れませんが、現在の株式会社Flucleには各自のノルマはありません。目標数字はありますが、その数字は行動指針ではありません。では、今は何を道標にしているかというと「顧客の声を集めること」一点のみです。マーケも、セールスも、カスタマーサクセスも、これまで購入いただいた、そして未来の顧客の声を集めることに注力し、日々行動をしています。
注意したいのは、集めるのは「声」であって「ニーズ」ではないということ。ベンチャー企業とは「自らが考えた、まだ市場にないサービスを、自らの手で売る会社」です。顧客の課題に向き合うこと自体は大切ですが、「いわれたものをつくる会社」はベンチャーとはいえません。
市場の創造…価値の創出…語られ尽くした言葉たちが頭をよぎります。
まだ誰も見たことのないアイデアを生み出す。
これはときに、「毎月〇件の成果を出せ」といわれるよりもキツいものです。
量が質に変わる瞬間
書き出されたふせんの99%は、実現しないアイデアでしょう。しかし全員の知恵とひらめきを集め、グルーピングを繰り返していると、「ふわっ」とアイデアの塊が浮かび上がってくる瞬間があります。無機質なふせんたちがウヨウヨとテーブル上を動き回り、無数の組み合わせを生み、突如反応を引き起こす瞬間は、なかなか気持ちがよいものです。
ただしアイデアの塊が浮き上がってきても、全員にしっくりくるとは限りません。1人だけ「違和感がある」というときもあれば、半数で意見が割れるときもあります。それも含めて、とにかく量が大切。
「たった3人しか異性のいない合コンで運命の相手に出会う」のが、至難の業なのと同じです。たった数個のアイデアしか出さないのに、市場に受け入れられるサービスが生まれるわけはありません。
1日目の山場、カスタマージャーニーの作成を終えるともうぐったり。
何とか予定通りのスケジュールをこなし、20:00からは夕食&大宴会です。
ニューフェイスが加わった!
合宿初日の11月1日は、新しいメンバーの入社日でもありました。1年探しまくってようやく入社が決まった、待望の1人目エンジニアです。これからゴリゴリ開発を進めていただきましょう。
今回の合宿は、参加者7名中、6名が酒飲み。かつニューフェイスエンジニア小杉(通称こっすん)は、浴びるようにアルコールを飲んでいく、まさに「ザル」な道産子。ビールサーバー大活躍、赤ワインと日本酒と、極上の肴を堪能しながら、歓迎の意を込めて宴は深夜まで続きました。
毎回書きますが、合宿は「大変なことは身をもって知っているが、それでも行きたい、ポジティブなイベント」です。よく「会社、仲がいいね」といわれますが、プライベートに干渉しあう間柄ではありません。ただし何年間か分からないけれど、同じチームに属し、同じ釜の飯を食う関係ではあります。
代表取締役×入社初日のエンジニア×カスタマーサクセス担当 深夜まで語らい合う
古臭いかも知れませんが、年に1回の合宿で、腹を割って話しあえない人は、正直いまのチームでは本気で一緒に仕事ができない。少人数で、あっぷっぷしながら、それでも大きな価値を生み出そうとするベンチャーに、「忖度・派閥・不信感」は不要です。全員が安心して最速でアイデアを形にするためにも、素で合宿を楽しめることはとても大切です。
2日目、具体的なアクションにどこまで落とせるか
2日目が始まります。
昨夜あんなに飲んだのに、きちんと全員が起きてくるあたり、会社です。
あいにくの土砂降りで、朝の散歩は中止。昨日、時間が押しに押したことを思い、食後は早めにスケジュールに入りました。
前日が、とにかくアイデアを出しまくる拡散作業であったのに対し、2日目はアイデアや決まったことを手元に引き寄せ、タスク化していく作業を続けます。
今回、初めて本格的にサービスブループリントを作成しました。サービスブループリントとは、「サービス提供のプロセスで、ユーザー体験・サービス提供者の双方の動きを時系列で表したもの」。カスタマージャーニーに、提供側の要素が加わったものだとお考えいただければよいかと思います。
昨日のふせんを座敷に広げる。もはやテーブルでは間に合わない。
昨日作成したカスタマージャーニーを再確認し、ブループリントに落とし込んでいく
たったひとつのサービスを世に提供するまでに、こんなにも多くの要素が絡まり合っていることは、いち消費者であったときには気付きませんでした。「レジでお金を払う」「購入ボタンをポチる」の裏側には目に見えない地図が広がり、ユーザーを「買ってよかった」の旅にいざなえるよう、あらゆる工夫がなされているものです。これは自分が消費者であるときも忘れないようにしたい、そう思います。
2日間をかけて仕上がった、壮大な地図はこのようになりました。
上から「未来」➡「課題」➡「カスタマージャーニー」➡「ブループリント」ときて、一番下は、何月に誰が何を担当するかというタスクです。フワッとした「やろうよ」が具体的に落とし込まれていきます。担当といっても、各部署はどこもひとり。誰がやる?なんていう選択肢はなく、「あー、これ僕っすわ」と自ら書き込んでいかざるを得ない、逃げられない環境です。
締めはもう一度、「今の課題」との向き合い
現在開発中の新サービスについて壮大な地図ができあがり、年始にかけての、各自えげつない量のタスクが可視化されたところで、私たちはもう一度テーブルに戻りました。
最後は、「いま展開しているサービスの課題」を話し合う時間。新しいサービスには未知のワクワク感が詰まっています。しかし既存サービスではすでに課題がデータ化されています。目を背けず、具体的なテコ入れを考えるフェーズです。
どうする?
割と行き詰まっている既存サービス。現状打破の鍵は、どこにあるのか。
合宿スタートから30時間。カスカスになるまで脳を使い込みます。
新機能のアイデアをとにかく書きまくってみます
昨日と同じ顔ぶれとは思えない、疲弊がにじみ出るメンバーたち
もし、弊社と似たようなスケジュールで「経営合宿に行こう!」とお考えの方がいらっしゃいましたら…2日目の進行についてはよくよく工夫されることをおすすめします。メンバーのノリや体力、議論の内容、環境、どれかにミスマッチが起きれば、2日目の午後に必ずパフォーマンスが落ちる魔の時間帯がやってきます。
合宿の終了時間まで、あと少し。そして、既存サービスの課題クリアも、あと少し、あと少し…。そんな気持ちで、全員で脳内をほじくりまわし、アイデアを出し切り、合宿の全スケジュールが終了しました。
こちらが最後のふせんたちです。見るからにぐったりと疲れ切っています。昨日、活きよくテーブルを動き回り、私たちに「ねえねえ!こんなアイデアもあるよ!」と能動的に語り掛けてきたピッチピチのふせんたちは、もうここには存在しません。
それでも、2日間で1300枚ほどのふせんが、私たちの「サービスの基礎づくり」を助けてくれました。命を削り、私たちのアイデアや想いや、課題や希望や…あれやこれやを全身で受け止めてくれました。
3回にわたる合宿記事の執筆で、うすうす気付いていましたが、
もはや、合宿の主役は、ふせんなのではないでしょうか。
万が一誰かが来れなくても、合宿は決行できますが、
ふせんを忘れてしまえば、もはや合宿そのものが成り立たないからです。
\\\ ふせん、ありがとう! ///
1300枚のふせんと一緒に、32時間を戦い抜いたメンバーたち
ちなみにこの後、土砂降りの中、駅まで20分かけて歩いたにもかかわらず、梅田に到着する頃には元気を取り戻し、「ちょっと何か食べよう」が「打ち上げよう」になり、「1杯だけ」が「おかわり」になり…。最後まで残ったメンバーはワインバーでボトルを開けるという愚挙にでました。ベンチャーを支えるのは、なんといってもこの無謀さと、体力でしょう。お疲れさまでした!
お読みいただきありがとうございました。社内記録用…と思い、このように書き綴っている合宿記事ですが、意外と求人に応募してくれる方から「読みました!」といっていただく機会があり、書き手としては驚いております。「一緒に合宿に行ってみたい」と思った方は採用情報ページをご覧ください!エンジニア&労務管理経験者を絶賛募集しております。
そして、引き続き株式会社Flucleをよろしくお願いいたします。