リトリートマニアの皆さま!おまたせいたしました。
実に1年ぶりの、本田による「リトリート×仕事」レポートです。
「リトリート×仕事」とは、カンタンにまとめると、「自然に囲まれた、非日常の環境に行き、めちゃくちゃ仕事して帰って来る」というプログラムです。訪問先で、遊んではいけません。脳をクリアにして、いつも以上のアウトプットを求めます。このメカニズムについては、今までたくさん書いてきましたので、ぜひ過去記事をお読みください。
【まだ読んでいない人はこちらから】
本田が今までに行った「リトリート×仕事」のレポート一覧
リトリート×仕事 過去記事一覧
みたいなことを発信し続けていたら、@人事さんの編集部からお声がかかり、人事視点のインタビューに仕上げていただきました。ありがたや。
(以下URL、別ウインドウで@人事さんのサイトに遷移できます。こちらもお読みください)
「仕事で頑張った分休んで」と部下に言いがちな上司が知るべきこと
リトリートとは、「隠居・避難」「隠れ家・避難所」の意味を持つ言葉です。またデジタル大辞泉によると、リトリートとは「仕事や家庭などの日常生活を離れ、自分だけの時間や人間関係にひたる場所などを指す」とのこと。
この「日常生活を離れ」という文言からは、ともすれば「単に山や海・高原などの施設に行くことが目的」と解釈をしてしまわれそうですが、リトリート環境で仕事の成果を出そうと思うなら、その考えはいったん捨ててください。単に自然に囲まれることで生産性が上がるというほど、リトリート×仕事は単純ではありません。
柔軟に!
既成概念を捨てて!
仕事を面白くするために体を張る!
今回も、さまざまな角度から「リトリート×仕事」を検証してみたいと思います。
出発日はデジタルデバイスから遠ざかれ!
今回の「自分だけの時間や人間関係にひたれる場所」は、徳島県の美馬市。そう、あの清流・吉野川のある町です。
期間は6泊7日を確保。いつも通りAirbnbで宿を取り、最小限の荷物をキャリーケースに詰め、梅田からの高速バスに乗車したのは16:30。バスが明石海峡大橋を渡るころには陽はすっかり落ち、12月の澄んだ夜空に神戸近辺のネオンがきらめいていました。
目的地はここ!
「リトリート×仕事」でひときわ大切なのは、日頃使っているSNSのシャットアウト。頭をサッサとリトリート状態に落とし込むためには、ひっきりなしに入ってくるジャンクな情報を自分の手で止めておかなければいけません。バスの中ではイヤホン装着、クラシックを小さく流しながら、車窓を眺めたり、文庫本を読んだり…
現地到着後も、PCはカバンから出さず、スマホも部屋に置きっぱなしにします。出発当日はとにかくデジタルデバイスから遠ざかるのが鉄則。16:00ギリギリまで画面とにらめっこしていた脳が、「あ、今日はもう自由なんだ」と認識するまで、意識的に、徹底的にネジをゆるめます。
寝るときもアラームをかけたスマホを遠ざけ、布団に入って少し読書をして、日付が変わる前には就寝。翌朝からスッキリ・バリバリと仕事ができる状態に自分を追い込むわけですね。これは、何度も何度もリトリート×仕事を繰り返してたどり着いた「私の」方法論です。個人差はあるでしょう。しかし日頃からPC・スマホ漬けで、情報の海を泳いでいる仕事人には、そこそこ当てはまるのではないかと思います。
リトリート×仕事と「コミュニケーション」
今回、6泊7日を過ごしたのは、美馬市の「のどけや」さん。実はだいぶ前からAirbnbの「お気に入り」に入っていました(本田のAirbnbマイページには、リトリート×仕事で行ってみたい宿がたくさんストックされているのです)。
「のどけや」さんは元旅館を改築した、古民家ゲストハウス。共用のリビングやキッチンで、オーナー夫妻や子どもたち、そして他のゲストと交流しながらの滞在が可能です。
今まで私は、リトリート×仕事で成果を出すには「一切、人と話をしない方がよい」と考えてきました。そのため貸切の古民家などにこもり、まる3日、人とコミュニケーション取らず…というスタイルを中心にしてきましたが、今回はその固定概念をマルっとひっくり返すことに決めました。
それは、今回「どんな仕事をリトリート×仕事に持ち込むか」を精査しているとき、ふと気が付いたからです。
「前回のリトリート×仕事の時期と、今回とでは、持ち込む仕事の質が大きく変化している」と。
めちゃくちゃ増えていた、チームでの仕事
前回までは「記事の作成」「サイトの作成」といった個人完結の作業がほとんどでした。そこに「戦略立案」などの思索系のタスクが入り混ざり、とにかく時間を忘れて没頭したい…ゾーンに入りたい…という気持ちが大きかったのを思い出します。
実際、いい感じに「リトリート状態」に入れたときは、タイムワープしたかのように感じたり、まるで自動筆記か!!と思えるほどの集中力で記事を仕上げられたり…。その快感が忘れられず、機会を見つけては「リトリート行ってくる」と会社に告げてフワフワ出かけているのですが…。
今回はそうはいきませんでした。なぜなら、1年前にはほとんどなかった「チームでの仕事」がめちゃくちゃ増えていたからです。
そして、それにも増して「即時発信が必要な仕事」も増えていました。前回までは容赦なくすべてのSNSからログアウトし、自分の作業に没頭できていましたが、今は相談し共有し合わないと、何も進まないのです。
「だめだ、今回はチャットワークもTwitterもFacebookも、切れない…」
「WEB会議も挟まってくる…」
一瞬「デジタルデトックスして作業できないなら、リトリート×仕事に行く意味、ある?」とまで考えましたが、それではこの先ずっと、行けないことになってしまう。それはイヤだ。私は自分の気が向いたときに、好きな場所で、仕事がしたい!
というわけで、発想の逆転です。
「今回のリトリート×仕事では、コミュニケーションを取り入れてみようか」
というわけで、マイページのお気に入りにストックしてあったリストの中から、今までとは違うスタイルの「のどけや」さんをピックアップし、予約をしたわけです。
うだつ、あげたい。
ロケーションは最高でした。宿から徒歩1分で「うだつの町並み」です。うだつとは、「うだつが上がらない」ということわざの語源にもなった、隣の家との境につくられた小屋根付きの袖壁。お金がないと設置できなかったということで、確かに豪商!という感じの邸宅が並んでいます。(あやかりたい)
紅葉する山を背景に並ぶ、白壁の屋敷たち
土日はちらほらいた観光客も平日にはさらに減り、この風景を「ひとり占め」できる瞬間が幾度もありました。通りは道の駅にも隣接しており、古民家カフェや、名産の藍染の雑貨屋さんも並んでいます。カメラ片手にフラフラするには最高です。
しかし観光に来たわけではありません。1日8時間(プラスα)はしっかり仕事をして、その先にある「あ〜、気持ち良く働けた!」という充実感を存分に味わいたい。というわけで、2日目はオーナー夫妻からの情報を元に、仕事に向いているロケーションを探しに出歩きます。
デジタルノマドの聖地、美馬市立図書館
もちろん、ゲストハウスの自室にも仕事環境はととのっていました。引き戸を開けるとすぐに外という、隙間風天国な古民家ならではの環境ですが、石油ファンヒーターのおかげで部屋の中はポカポカです。とても静かで、誰も私の時間を邪魔しません。
マイ部屋のデスクと、夜の仕事をサポートしてくれたライト。
しかし、1日中部屋にこもっていては、わざわざ遠くまで来た意味がありません。リトリート×仕事の醍醐味は「自分の知らない風景、はじめての環境に身を置き、日頃の人間関係から離れて仕事に没頭する瞬間」にあります。
そこで、6日間にわたってお世話になったのは、「のどけや」さんから徒歩5分にある、美馬市地域交流センター『ミライズ』。シンプルかつ機能的、広々とした施設の至る所に「勝手に座って仕事のできるスペース」が設置されており、気分に合わせてハシゴしながらPCを叩けます。
ミライズにたくさんある「自由に使えるスペース」。ユートピア。
さらに素晴らしいのは、2階にある美馬市立図書館です。PC仕事用のブースを借りれば、図書館の中でみっちり仕事ができ、気分転換に本も読み放題。開放的で美しく、今まで訪問した図書館の中でも指折りの環境でした。
あまりの素晴らしさに写真を撮ってくるのを忘れたのですが、大阪に戻ってから「美馬市脇町の図書館は有名」という話をデジタルノマドやコワーキングマニアから聞き、深く納得。「そうそう!本当に素晴らしかった」と力説してしまうほどに、ととのっていました。
私の写真の代わりに、ミライズ公式サイトより、図書館のページを貼っておきます。ご興味のある方はどうぞ。
参考|美馬市立図書館
(そして、このミライズには大きなスーパーマーケットも併設されているんですよ!この発想すごくないですか?市民のためにつくった施設を、生活と密着させるにはどうしたらいいか…という問いの大正解が、ここにありました)
その他、宿から徒歩5分圏内にはコンビニ、コインランドリー、カフェ。20分も歩けば、大きな国道沿いの、チェーン店の並ぶエリアにたどり着きます。
晴れた午後に、洗濯が終わるのをSFを読みながら待つという、大阪にはない気分転換
気分転換は、すてきなカフェで。
西阿波は、デジタルノマドの聖地だとはうっすら聞いていました。官民あげて、リモートワークやワーケーションを推奨していると。しかしここまでコンパクトに、自然と利便性が両立しているとは予想しておらず…。おかげで、6日間の仕事環境に悩むことは、まったくなし。
自律、規律、そして…
今までのリトリート×仕事と大きく違ったのは、やはりコミュニケーション部分でした。宿では共同キッチンで料理をして、他の滞在者さんと夕食を食べ、スーパーマーケットで買った地酒を楽しみます。
リトリート×仕事にとって、コミュニケーションは本当に良し悪しで、もし最初の体験がこの環境だったら、恐らく求めるアウトプットは出ていなかったでしょう。だって楽しいから。しかし何度も長期リトリートを繰り返している私は、自分の「スイッチ」が分かっています。どんな要素が自分のやる気を阻むのかも、ある程度知っています。
だから、こう決めました。
前回までのリトリート×仕事のテーマが「没頭」だとしたら
今回は「規律」でいこう。
本田は基本的に、時間で仕事を区切られるのが嫌いです。もちろんタイムカードで管理する・される仕事の経験もあれど、「書く」を仕事にした以上、ノッてきたときはそのまま突っ走りたいし、外部要因で細切れにされたくない。その代わりノッてないときは、書きたくない。ワガママといわれたらそれでお終いですが、結果、アウトプットの水準が同等もしくはそれ以上であれば、いいと思っています。
でも今回はそれは封印。6日間の生活にあらかじめ時間設定をして、あえてリズムをつくってみよう。そう決めました。
【参考】毎日のスケジュールと過ごし方
6日間の「基本スケジュール」をシェアしておきます。
6:45 スマホのアラームが鳴る
7:00 起床(スマホは時間確認のみ。何も見ない)、身支度を済ませる
7:30 キッチンでお湯を沸かし、ドリップコーヒーを淹れる
7:45 PCを立ちあげて、仕事スタート
素晴らしいのは家事をしなくていいこと。起床後に発生する「ゴミ捨て・洗濯関連・掃除関連」が一切発生せず、クリーンな気持ちでPCが立ち上がる!クリーニングに出そうと思って積んである洋服も、部屋の隅のホコリも、処理待ちの郵便物も目に入らない!当然電車に乗って出社する必要もなし!雑多な用事からすべて解放されて、気持ち良く仕事に入れる環境、ビバ旅先!これだけでも「リトリート×仕事」のメリットを語れます。
朝ごはんは、コーヒーと一緒にビスケット・チョコレートをかじる程度にとどめます。とにかく頭と胃がスッキリしている間に、1日で一番集中して、作業を進めたいからです。季節が12月というのもこの集中タイムをサポートしてくれました。キンと張った寒さと静けさが、バリアのように朝のデスクを囲い、「私だけの空間」を守ってくれます。聞こえるのは石油ファンヒーターの音だけ。
10:00 コーヒー、もしくはお茶のおかわり。ストレッチしたり。
11:30 午前の集中タイム終了、軽いランチをつくる
午前中にはWEB会議が入ることもしばしば。なるべくリズムを崩さないように、あらかじめ時間を調整しておきました。
ランチは毎日、到着日に教えてもらった名産品「半田そうめん」。にゅうめんにしたり、オリーブオイルで炒めてペペロンチーノ風にしたり…(半田そうめんアレンジについて別記事が一本書ける程度には、はまった感があります)
12:00 外出・散歩もろもろ
12:00になったら、カメラとPCを持って外出します。適度にウォーキングをしたり、コインランドリーに行ったり…その日の気分で少し活動します。
13:00 どこかに腰を据えて仕事にとりかかる
午後は主に、前述の『ミライズ』に行き、図書館に沈没するか、フリースペースをハシゴしながらリズムを付けて細かいタスクをこなすか…好きなように過ごします。滞在中はおおむね晴れ。どこにいても、窓の外に青空が広がっていました。
17:00 スーパーマーケットで買い物
4時間、ギュッと仕事をして、夕方はミライズの中にあるスーパーマーケットで買い物をします。部屋で飲むミネラルウォーターや、地場産の野菜、見慣れない食材を探してみたり…という気晴らしが日課になりました。
18:00 夕食&交流タイム
夕食は、他の滞在者さんと一緒に、交流しながら。食材の交換やそれぞれの料理のふるまいなんかも楽しくて、毎日しっかりと栄養満点な夕食を摂っていました。ちなみにお酒もそこそこ飲みます。
20:30 部屋に引き上げ
ここからは、最後の仕上げ。お気づきかと思いますが、午前と午後ですでに8時間は仕事をしているんです。しかしせっかくの非日常、家事や飲み会から解放された自分だけの夜。気を散らずものは「なにひとつない」空間で、低く音楽を流しながら、追加の仕事をします。主に執筆やデザインなど、ひとりで没頭した方がいい作業は夜に残していました。
キンと頭が冴えてきたら、コーヒーでアルコールを飛ばして、書き物に集中。逆に、トロンとしたいい感じの波が来たら、ちびちび日本酒を舐めながら、アイデアを紙に書き出す「ひとりブレスト」をしたりします。リトリート×仕事で大切なのは、とにかく自分の「脳の状態」を俯瞰して、一番いいアウトプットにつなげることに尽きるのです。
23:30 就寝
リトリート×仕事でいつも徹底しているのは、日付が変わる前に寝ること、そして寝る前にスマホを見ないこと。アラームをかけたスマホは手の届かない位置に置き、眠くなるまで文庫本を読みます。睡魔がきたらすぐ消灯!
主にこのリズムの繰り返しで、1日の仕事時間は最短8時間、最長12時間でした。
吉野川の力
今回のリトリート×仕事をよりよいものにしてくれたのは、宿から徒歩5分で行ける吉野川。朝昼晩と、どの時間帯に行っても、絶景で迎えてくれました。ほんの数分でも、散歩をすることで自分の集中力が上がるのが分かります。
どうでしょう。日頃、窓の外が見えない部屋で仕事をしている人は、ぜひ一度自然の中でやってみてください。開放感という陳腐な言葉ではいい表せない素晴らしい環境です。脳の中のパズルがカタカタカタ…と音を立てて勝手に組みあがっていく快感。そして、実際に上がる、アウトプットの質。最高です。
株式会社Flucleのリトリート×仕事は、「働くをカラフルに」というスローガンのもと行われている人体実験ですが、果たして、このような働き方が本当にパフォーマンスを上げるのか…そのデータ化は、とても難しいのが実態です。
しかしすべての人に有効な施策など、存在しません。そうであればこそ、この新しい取り組みが「今の働き方でちょっと苦労している、誰かのため」になるのではないか…そう考えて、毎回出発しています。
実際社内では、定期的に自然の中での合宿が行われ、行き詰ったら温泉リトリートに行くという行動が定着してきています。社内でだって、はじめはキワモノ扱いされていた「リトリート×仕事」。急に世の中をひっくり返すことはできませんが、必要な人が、必要なときに、ご自身の「働く」のスタイルをキープするために活用して欲しいと願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
【もっとリトリート×仕事のことを知りたくなったあなたに!】
株式会社Flucleと、社員本田が試行錯誤を繰り返した、過去のリアルレポートをお読みください。