リトリートマニアの皆さま、お待たせいたしました。株式会社Flucleが「人の力を最大化させる」というコーポレートミッションのもとに挑戦しているリトリートレポート、今回は…リトリートと環境・距離の関係を読み解くべく、今までで一番遠くへ。4泊5日の「九州編」をお届けします。

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リトリートとは、「隠居・避難」「隠れ家・避難所」の意味を持つ言葉です。またデジタル大辞泉によると、リトリートとは「仕事や家庭などの日常生活を離れ、自分だけの時間や人間関係にひたる場所などを指す」とのこと。

この「日常生活を離れ」という文言からは、ともすれば「単に山や海・高原などの施設に行くことが目的」と解釈をしてしまわれそうですが、リトリート環境で仕事の成果を出そうと思うなら、その考えはいったん捨ててください。単に自然に囲まれることで生産性が上がるというほど、リトリート×仕事は単純ではありません。

柔軟に!
既成概念を捨てて!
仕事を面白くするために体を張る!

今回も、様々な角度から「リトリート×仕事」を検証してみたいと思います。

リトリート要素を満たすには、総合的なバランスが必要

株式会社Flucleのリトリート事業担当・本田が、今回確保できた日程は4泊5日です。いつものごとく、どこへ行っても良かったのですが、なんとなく「海がいいな」と思っていました。

はじめて長期のリトリートへ行ったのは、極寒の2月初旬でした。そのときは雪の降る日に古民家に泊まり、石油ストーブを頼りに隙間風と闘っていましたが、季節はもう初夏!

海風の吹き抜けるワークスペースで、さざ波の音を聞きながら書き物なんてしてみたい…。そんなルンルンなイメージから、海のある地域を中心に行き先を探し始めたわけですが、今回もさまざまな壁にぶち当たりました。

場所を決めるにはまず、リトリート×仕事の目的をはっきりさせなくてはいけません。今までの経験から、目的と環境がブレると、ただの締まりのない旅行になってしまうことを知っているためです。

たとえば
一番初めの長期リトリート(飛鳥・名張編)は、環境を変えることで脳の状態がどうなるかを確かめるため。
日帰りのスーパー銭湯リトリートは、お湯の中という究極に原始的な環境で、デジタルデトックスをして考え事をまとめるため。

そこで今回は、あえて自然にもデジタルデトックスにもこだわらず「ひたすら、ひたすら、非日常の環境でPC仕事をはかどらせるためのリトリート」という目的を定めました。

それだけなら、近隣のコワーキングスペースでも可能かも知れません。しかし「リトリート×仕事」である以上、いくつかの条件が求められます。

①自分にとって非日常の環境へ行くこと
②日頃の人間関係から離れられること(SNS含む)
③上記2点が達成され、その結果、アウトプットの質が上がること

そのために求められる環境条件は

①誰にも邪魔されず、静かで、自分の時間をコントロールできること
②WIFIが使えること、自分だけのワークスペースが確保できること

そしてここに、私なりの条件が加わります。

①海が見える場所にデスクがあること
②予算内で、4泊連泊ができること
③4泊5日、きちんとした食事ができること
④車が無くても成立するスケジュールであること

しかし、この「私なりの条件」が曲者でした。いったん海というイメージにとらわれてしまった本田は、和歌山から瀬戸内、果ては佐渡島から房総半島まで、条件に合う場所をAirbnbで検索しまくる日々を送ったのでした。

 

意外なネックは「食事」

上記の条件を満たす場所はなかなか見つかりませんでした。(もし「そんな場所、すぐに見つかるよ」という方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。次回利用させていただきます!)

海まですぐかと思ったら、部屋には窓がなかったり。岬の先っぽで絶景ロケーションかと思ったら、最寄り駅から徒歩2時間だったり。海は海でも、窓から見えるのはヨットハーバーや漁港だったり。条件にピッタリと思ったら、交流重視のドミトリーだったり。

そして今回、思わぬネックとなったのは食事でした。リトリート×仕事は決して修行ではありません。きちんと食べて、寝て、いつも以上に健康的な時間を過ごせる環境が求められます。

そのため、一時はAirbnbを離れ、じゃらん等の旅行サイトで「食事の提供がある」民宿やホテルも視野に入れて検索をしました。しかしやはり、食事の時間が決まっている宿は、リトリートの最大の醍醐味でもある「早朝から夕方まで、自分の好きなように時間が使える」という条件を捨てることと同義であるため、諦めざるを得ませんでした。そしてその結果、「キッチンがあって」「自力で買い出しに行ける」という条件が必須となったのです。

 

海を捨てる、そして距離という要素を入れてみる

食事の次にネックとなったのは、「PC仕事をはかどらせる」という目的です。単に景色の良い環境でカタカタやるだけでは、「脳をリフレッシュさせてアウトプットの質を上げる」というリトリート×仕事の最大の目的を果たせそうにはありません。

リトリート×仕事で「よっしゃ!気持ち良くはかどった!」という満足感を得るためには、とにかく脳をスムーズに「リトリート状態」に持っていかなくてはなりません。

そのため今までにもさまざまな条件下での実験を重ねてきました。

これまでに効果があったのは「半日をかけた、五感に集中するための散策」「お湯の中」「山寺でのプチ瞑想」という、まさに非日常のプログラム。これらはデジタルデトックスとの相乗効果で、一気に感覚をシャープにし、集中力を高めてくれました。

しかし今回は、食事の条件からそうそう田舎にこもるわけにいきませんし、PCもスマホもフルに使って仕事の能率を上げることが目的のため、デジタルデトックスの効果も見込めません。

(これではまじで、単に家でも会社でもないところで仕事をするだけになってしまう…)
(近隣のコワーキングスペースとの差別化はどこに…)

さらに、本田を混乱させたのは、とある友人からいわれた「リトリート×仕事って、出張と何が違うの!?」というセリフです。

(リ、リトリートと出張の明確な違い…確かに…答えられない…)

リトリート×仕事の目的は行動ではなく「状態」のため、自発的に行こうが、会社組織で行こうが、ミッションは変わりません。しかし確かに「仕事」が絡むと、知らない人にはいったい出張と何が違うのかが分かりにくい。なるほど、今後チームリトリートを計画するためにも、この違いをはっきりさせることは課題になっていくな…

「海を見ながらのお仕事」にワクワクする気持ちは半減しました。そしてどうすれば「仕事向きの環境」と「リトリート状態へ入れる条件」を並列で手に入れられるかを考えた結果、

「自然とデジタルデトックスを捨てる代わりに、距離を取ってみる」

という策を選んだのでした。

 

いざ、福岡。そしてキャリーケースは本と食料で埋まる。

人は、「遠くへ行く」という行為自体に非日常を覚えます。ましてやそれが「見ず知らずの街」であるならば、そこでの集中した仕事は、予想以上に効率があがるのではないか…という仮説です。

また、「リトリート=リゾート地のような自然たっぷりの場所へ行く」というステレオタイプなイメージを払拭したいという思いもありました。確かに自然は一気に脳をリトリート状態に持っていくには最適です。しかしどうしても「自然たっぷりの場所に行った」という刷り込みの満足感が先に立ち、リラックスやリフレッシュが優先されてしまうという弊害もあります。「リトリート×仕事」では、あくまでその先のアウトプットの質の向上を求めます。そのため、自然が第一条件ではなくても良いのです。

というわけで、海辺の宿という条件を捨てて選んだ行き先は、福岡県。

大阪からいい感じに距離があって
程よく郊外で
自然に囲まれた離れに連泊できて
駅まで徒歩15分、駅にはイオンがあって
キッチン完備、Wi-Fiも使えて
とにかく日中の時間が自由になる

そんなお宿を予算ギリギリラインで見つけた本田は、予約を済ませ、新幹線の格安チケットを購入。もともと北海道出身の本田にとって、今回のリトリート先は「人生で一番遠い日本」です。これはなかなかに非日常感があります。

冬と違って、持ち物もそう多くはありません。そもそもほとんどを部屋の中で過ごすわけですから、着替えといってもたいした数は不要。アメニティやタオルは先方でお借りする前提で、洗いやすいラフな洋服をくるくる丸めて詰めたキャリーケースは、ガラガラでした。

しかし今回はここに食料が加わります。4泊5日ということは最低でも10食を自分で調達しなくてはなりません。なにせ初めての場所ですから、油断は禁物。駅前にイオンがあるのは分かっていましたが、毎日重たいスーパーの袋を下げて往復して自炊をすることが目的ではないため、「買い出しは4日間で1回にとどめる」という予定を立て、ある程度の備蓄食材を持参することにしました。

家のキッチンにあった中途半端な食材をポンポンとキャリーケースに放り込みます。

・パスタと、レトルトのパスタソース数種類とカップポタージュ、ビスケット
・ドリップコーヒー、各種ティーパック
・かつおぶし、顆粒だし、インスタント味噌汁、コンソメなどの調味料系
・イナバのタイカレー缶、レトルトごはん等々…

これらと、イオンで買い込む予定の生鮮食品で、4日間の「リトリートめし」をなんとかしよう!

そして今回は、空き時間はなるべく読書をしようと決めていたため、食材の隙間には文庫本が詰め込まれました。スカスカだったキャリーケースは相応の重量になり、それは「4日間」の成果への期待の重さでもあると同時に、はじめての試みを詰め込み過ぎではないか…というほんの少しの不安の加わった重さでもありました。

 

リトリート×仕事には自律が求められる

リトリート×仕事を体験するたびに思います。ひとりで行くリトリートに一番大切なもの、それは「自律」であると。

スマホを見ないと決めたら、見ない。
仕事をすると決めたら、する。
自分と向き合うと決めたら、つらくても向き合う。

誰にも見られず、誰にも強制されず、しかし「自分の生き方と、より良いアウトプットのために」少し頑張る。

その「頑張り」を後押ししてくれるものが、「非日常の環境」と「デジタルデトックス」です。

人は弱いので、どこかに出かけて気が緩むと、とことん緩んでしまう可能性もあります。しかしそれは「リラックス」「リフレッシュ」「リラクゼーション」の領域であって、「リトリート×仕事」の目指すところではありません。

ゆるゆるにネジを緩め切りたいときは、全力で「リトリート×リラックス」を行えばいいのです。リゾート地でスパ三昧でもよし、温泉宿でとろけるまで湯につかるもよし。振り切ってネジを飛ばしてしまいましょう。

しかしリトリート×仕事では、その「緩み」を求めません。求められるのは、日常という「緊張」と、リラックスで得られる「緩み」の中間にある、ニュートラルな、あなた本来の「平常」という状態です。その状態こそが、あなたの脳をパリッと活性化させ、アウトプットの質を最大限に向上させるのです。

次回記事では、福岡での4日間の生活についてをレポートします。
続きもお読みいただけると幸いです。

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