リトリート先で仕事をすれば、いつもとは違う頭の使い方ができるのではないか…?
という問いかけから始まった、株式会社Flucleの「リトリートと仕事は両立できるのか」シリーズ、いよいよ今回は社員全員でのリトリートです。
リトリートとは、「隠居・避難」「隠れ家・避難所」の意味を持つ言葉です。またデジタル大辞泉には、「リトリートとは仕事や家庭などの日常生活を離れ、自分だけの時間や人間関係にひたる場所などを指す」とあります。
株式会社Flucleでは、時間内にめいっぱいのコンテンツを押し込む研修ではなく、できる限りの「マイナス」をする研修を企画実行しています。
研修や会議というと、与えられた時間内を効率的に使わなくてはいけないという固定概念に囚われがちです。しかしこの「何かしなくてはもったいない」という意識を変えることこそが、実は人の力を最大化するヒントなのではないか」という仮説の元、様々な観点からリトリート先での仕事を検証しているのです。
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リトリートと仕事は両立できるのか(6日間にわたるリトリート旅行のレポートです)
その会議、会議室でやる必要ありますか?(社内会議を野外で行ったレポートです)
リトリート×仕事は日帰りでも効果が出るのか(スーパー銭湯で日帰りリトリートをしたレポートです)
柔軟に!
既成概念を捨てて!
仕事を面白くするために(全員で)体を張る!
さて今回の行き先は、どこなのでしょうか。
山道の上にあった、聖なる静寂
今回の「リトリート×仕事」は、ご縁あって1日お借りすることができた、山の上の古刹で行いました。
8:30、近鉄・大和八木駅に集合してレンタカーで向かった先は、奈良県五條市です。
春らしい澄んだ青空が広がる、絶好のドライブ日和。車はたくさんの鯉のぼりがはためく吉野川を超え、丹生川に沿って進みます。初夏のような陽気のはずが、西吉野はツンとした山の涼気に包まれており、鼻から入る空気は都会のそれとは明らかに異なりました。
案内されたのは、(そこそこのドライビングテクニックが要求される)地元民しか上らない山道の先の、大きな伽藍でした。
Googleアースで見ると、折り重なった山々の隙間にまるで隠れ里のように配置された、山間の集落にあるお寺です。
圧倒的な量感で視界に迫ってくる新緑の山並は決して心安らぐものではなく、この山々を駆け巡って修業を重ねた修験者や、巨木を運んで山の中腹に伽藍を建築した仏教徒の「やり遂げる強い意志」を感じさせます。
西に行くと高野山。東に行くと大峰山。ふたつの霊峰に挟まれるという何とも絶妙な位置にあるお寺は、聖なる静寂に包まれており、「リトリート×仕事」に最適な空間でした。
「4つのR」
この連載で何度も書いているように、株式会社Flucleでは、「リトリート」と「仕事」は対極にあるように見えて実はとても親和性が高いものだと考えています。
「4つのR」をご存知でしょうか?
Rest(レスト)
肉体の疲労を回復させる「休憩」。睡眠や短時間のくつろぎ、マッサージなど、身体のエネルギーを取り戻す行為。
Relaxation(リラクセーション)
心身の緊張をほぐすためのもの。副交感神経の働きを優位にして緊張をとくために、呼吸法・音楽療法・アロマテラピーなどの手法を用い、全身を弛緩させる行為。
Recreation(レクリエーション)
気分転換のために遊びや運動、娯楽を行うこと。ジョギングやサイクリング、音楽演奏、ハイキングや趣味のイベント参加などの楽しい時間を過ごし、自分をRe(再び)create(創造)するためのもの。
Retreat(リトリート)
日常いる場所から物理的に距離を取ることで、自分だけの時間を過ごすこと。
リトリートはあくまで「非日常に身を移す」というアクションでしかありません。また近年になり認知が進み始めたリトリートですが、その方法や場所に明確な定義がないため、リトリートはさまざまな方法で行われています。
たとえば
旅先のサイクリングは「リトリート×レクリエーション」です。しかし集団で行い、馴染みの関係の中で時間が過ぎるのであればそれは単純な「レクリエーション」ということになります。
またひとりで行ったリトリート先でマッサージを受け、心身ともに緩め切った状態になることもあるでしょう。それは「リトリート×リラクセーション(あるいはレスト)」です。
現在一般的に行われている「リトリート」のほとんどには、森林浴やヨガ、瞑想、山歩きなどの何かしらのコンテンツがセットされています。つまりリトリートにいずれかのRが加えられ、何らかの効果を目的とされているのです。
リトリート×仕事の仕組み
そこで私たちは、リトリートに「仕事」を組み合わせました。
なぜなら「リトリート先で得られる感覚は、リラックスやレクリエーションから得られるものとは少し違う」という事実を、身をもって知っているからです。
リトリートで非日常に身を移し、脳の可能性を引き出した先にあるのは、弛緩でも緊張でもない「平常」です。
そして人の持つ能力や可能性は、「もとの状態」のときに一番発揮されます。
では、リトリートで「もとの状態」…前記事では「基本の脳」と表現しましたが…に立ち返ったとき、何をすればいいのでしょう?
答えは簡単。アウトプットです。
あなたが絵描きなら、キャンパスに向かってください。
あなたが音楽家なら、自由に音楽を作り、奏でてください。
あなたがプログラマなら、いつも以上の集中力でプログラミングが進むでしょうし、
あなたの企画書作成が止まっているなら、不思議とアイデアが湧き出てくるでしょう。
それは決してマジカルな力に助けられたわけではない、あなたが「平常」に戻ったことで発揮される、あなたのデフォルトの能力です。
その能力を使って行うアウトプットには、リトリート最大のメリットである「快感」が伴います。ところがその状態をキープしたくても、ジャンクな情報、固定概念、煩雑な人間関係がそれを許してくれません。
そうしてストレスが溜まると、安易な現実逃避をするためにリゾート地へ行ったり、浪費や一時のリラックスを求めたりしますが、そこから戻ると、再び「緊張」もしくは「弛緩」に支配されてしまうという悪循環に取り込まれてしまいます。
「リトリート×仕事」では、まず状態を平常に戻し、そこで思いっきりアウトプットをします。
一般的なビジネスマンにとっての「仕事」は、時間に縛られたり、意に沿わないことを我慢したりという要素が含まれた「ネガティブ」なものでもあるでしょう。また現状で仕事を楽しめている人や、経営者・アーティストなど、クリエイティビティが求められる人にとってもアウトプットの質が下がることは避けたいはずです。
株式会社Flucleでは、その解決のために仕事から逃避したり、常に必死であることを要求するメソッドは不要だと考えています。
それよりも、状態を平常に戻し、アウトプットすること自体に「気持ち良さ」を感じられたら、
「仕事自体が、めちゃめちゃ面白くなる」と確信しています。
なぜなら、仕事とはアウトプットの連続だからです。
常にトップギアで、緊張状態を保ったままアウトプットを繰り返し、その状態をキープしようとしている人
常に思考が定まらず、フワフワした弛緩状態で自分の力を最大化できておらず、どうしたら良いか迷っている人
リトリート×仕事は、そのような人の能力をスムーズに正常化させ、可能性を最大限に引き出します。
現代人には「何もしない時間」が不足している
静寂のお寺でのプログラムは、以下のようなものでした。
10:00 本堂にて住職のお話を聞く(貴重な文化財も見せていただき、感激)
11:00 住職も交えたミーティング
12:00 昼食
13:00 ひとりで行うリトリートタイム
14:00 ひとりで行うアウトプットタイム
15:00 振り返りミーティング
16:00 終了
肝となるのは13:00~15:00の、ひとりになる時間です。たった2時間でどのような感覚が得られるか、また何に気付き、何をするか。各自の違う行動がどのような効果をもたらすか。
振り返りミーティングで出た意見や、社員アンケート、そして全員から出た「時間が足りなかった」という言葉の意味と、効果を最大化するために必要な要素については、次回記事でしっかりとお伝えします。
チームでの感覚共有
今回の「社員全員リトリート」は、たった半日の「体験版」でした。しかし、オフィスであれこれ話し合う時間とは違い、「チームでの感覚共有」が進んだという実感がありました。
本来リトリートでは、ひとりの時間が最優先されます。しかしそこに仕事の要素を加える以上、時にチームで行うことは避けられなくなります。
だからこそ
・チーム全員に高効果を与えられる行き先の選定
・短時間で効率的にリトリート状態に入れる仕組み
・「平常」を途切れさせないプログラムの組み方
などのノウハウが必要不可欠です。これらを重視せずに計画してしまうと「単なるチームのお出かけ」なってしまいますし、ともすれば「レクリエーションを目的とした親善旅行」と変わらなくなってしまうからです。
引いたところに、足すものが見えてくる。
このシンプルな考え方が、価値を生む。
リトリート×仕事は、この価値を追求していきます。
次回記事を楽しみにお待ちください。